栄養学部教員コラム vol.53
2012.07.26 管理栄養学科 菅 洋子
日本の高齢化率は世界トップであり、65歳以上の高齢者は全人口の23%に達した。平均寿命も同じく世界一であり、男性79.6歳、女性86.4歳であり、間もなく男女ともに平均寿命が80歳を超える日がやってくる(グラフ参照)。
今年に入ってバスをよく使うようになったこともあり、高齢者を多く見かけるようになった。以前は、乗客がバスに乗ったとたんにドアが閉まり乱暴に走り出すため、車内で倒れそうになることもしばしばあった。最近は高齢者のみならず乗車客の安全を第一に考え、座席に座る、あるいは吊革につかまったことを確認した上で「発車します」のアナウンスがあった後に出発する。バス停到着間際にも「バスが止まってから席をお立ちください」とアナウンスされる。停車時間が長くなって迷惑かけないように、走っている間に降りる準備をしなくては・・・などと思いながら乗っていた時代とは車内の雰囲気が変わった。また、横浜界隈を走る地下鉄では、全座席が優先席である旨が広告、アナウンスで知らされており、ずいぶん高齢者が公共交通を使いやすくなったものだと感心する。
高齢になっても健康な身体を保つためには「適度な運動」と「しっかり食べること」が重要なのはいうまでもない。しかしながら、高齢者自身が「元気でいたい」と思うモチベーションがないと、なかなか実践できないと感じる。
バスで見かける高齢者の中には、杖や歩行カート(買い物かごがついたタイプ)を使用している方もいる。ふらふら歩く方もいる。おそらく、そのような状態でも「出かける目的」あるいは「出かける必要性」があるのであろう。(その目的が「通院」という方も残念ながらいるでしょうが・・・。)習い事、買い物、観劇、旅行、事務手続き、ボランティア、お遣いなど、目的はなんでもよいでしょう。外出し、身体を動かすことが元気な状態を保つ秘訣であることを多くの高齢者や高齢者を支える家族に知ってほしいと感じる。身体を動かせば自然におなかもすくでしょう・・・。
外出する高齢者が多くなるためには、「環境整備」も大切である。バスの運転が高齢者に優しくなったことも、優先席が増えたこともその一つと言えよう。バス代を助成している自治体も多い。ただし、あくまで、外出する機会や身体を動かす機会を増やしてもらうための環境整備や支援であって、高齢者の身体をいたわりすぎてもいけないであろう。全く歩かせないサービス、荷物をすべて運んであげるサービス・・・、一見優しいように見えるが身体や筋肉は使わないとどんどん衰えるのである。
「おじいちゃん、家でゆっくりしていてね」ではなく、「おじいちゃん、一緒に買い物に行こうね」と連れ出してあげ、ちょっとくらい荷物を持ってもらうことが本当の優しさではないだろうか。
「平成24年版高齢社会白書」より |
菅 洋子(健康栄養学科)