栄養学部教員コラム vol.81
2014.08.21 管理栄養学科 山岸 博之
本学部の1年生は「教養ゼミナール」という授業が春学期にある。入学後最初の学期にあることもあり、大学に慣れるための時間でもある。4年間の学習上必要なスキルを「教養」として身につけるための時間と理解しており、私の「教ゼミ」では①質問力の向上、②積極性の開花、③仲間意識の醸成、を目指しており、15回シリーズの最後の2回は各々の設定した自習テーマについて学習成果を発表してもらう。自己紹介を含め、何かを発表する際には常に、発表者一人に対し全員が順番に質問する事を義務付け、最後に私も質問やコメントを加える。
教ゼミ序盤の数回は、自己紹介や図書館など学内施設利用に関するオリエンテーションで消費される。そして、人間関係が少しこなれてきた頃に、「自習テーマ」について発表する時間を設けるが、発表までの間には数回分の時間が生まれる。この時間は個人またはチームで1回分の企画を立案発表してもらい、実現できそうな内容について具体的に計画していく。仲間を巻き込んでみんなで楽しむのである。ただし、授業の一環でもあり、だらだらした遊びにならないようにとって付けたような内容の課題や目的を設定し、これを解決していくための企画を意見交換しながら練っていく。定番は、「周辺の環境を知る」と題した近所の野島公園や称名寺までの散歩だ。散歩も含め、学外の活動には事務手続きとして「学外活動届」の提出が義務付けられており、これには学生が作成した企画書を添付している。
今年最後の企画は、中庭でみた「巨大シャボン玉」を私も作りたい!を実現するための企画であった。シャボン液から使用道具まで、3週にわたり少しずつ計画を磨きやっとの思いで実施までこぎつけた。本番前日に企画者がリハーサルしてみると、ネットでちゃんと調べたはずなのにシャボン玉ができない。膜すら張らないのである。まさかの「企画中止」寸前である。急遽中庭の指導者であるH先生に泣き付いた。レシピをいただいたがこれを試す時間もなく、彼女たちは心のなかで雨乞いをしながら帰宅した。一夜明け、ネガティブな記憶を抱きつつも、レシピに従いシャボン液の仕込みを始めた。無数のシャボン玉が宙を舞う頃には、すっかり元気になってきた。洗剤やトッピングの種類や濃度などを変えながら色々と試し、「黄金比」なるものを確認できた。その頃にはたまたま居合わせたチビっ子たちが歓声を上げながら駆け寄ってきたので、共に楽しむこともできた。
自らの企画を運営する大変さと共に達成感を実感できたのか、公園からの帰り道では朝のテンションから想像できない表情をしていた。彼女たちにとって、ネット情報の「あやうさ」を体感したことが最大の収穫だったのかもしれない。
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山岸 博之(健康栄養学科)