栄養学部教員コラム vol.11
2009.05.21 管理栄養学科 吉田 博
白神山地の原生林を歩いてみた。
白神岳から十二湖へ下る途中、大きなブナの朽木に群生している
ツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)に遭遇した。
(↑朽木に発生したツキヨタケ)
色はシイタケに類似し、形はムキタケに類似している。
(↑ツキヨタケ)
昔から毒キノコとして知られ、
食すると激しい下痢と嘔吐にみまわれ、
しばし不幸な状況に陥るという。
以前、中毒を覚悟で食したことのある好奇心旺盛な友人によると、
「口当たりがよく、結構いける」そうであるが、
後が怖いので未だ食したことはない。
ツキヨタケを宿へ持ち帰り、灯りを消してみると
薄ぼんやりと光り出した。
(↑光を発するツキヨタケ)
ツキヨタケは何故、光を発するのであろうか。
幽玄とも思えるその光の魅力で夜行性の虫を誘惑し、
胞子を運んでもらうためなのか。
それとも動物を気味悪がせ、食べられないためなのか。
人間から見れば理解しがたい行為も
ツキヨタケにとってはきっと意味がある行為なのであろう。
人間は近代文明の恩恵で夜通し眩いばかりの灯りをともす。
先人のように星空の下で思いを巡らし、
月明かりを頼りに小道をたどることも今はもうない。
人間は自然の夜を忘れ、
真昼の自然のみで満足しているかのように思われる。
ツキヨタケが発する幽玄な青白い光は
今の我々に何かを問いかけているかのように思われてならない。
(↑ブナの原生林)
吉田 博(健康栄養学科)