栄養学部教員コラム vol.24
2010.05.27 管理栄養学科 倉沢 新一
大学で学ぶことの一つに、「科学的なものの考え方」があります。ものの考え方とは、合理的で論理的な思考といったものです。
仮に今、何か得体の知れないものが空を飛んでいるように見えたとしましょう。この時点では、飛んでいるように見えたものが何か分からず確認できていないので、文字通り未確認飛行物体(UFO:Unidentified Flying Object)です。このとき、いわゆる地球外から飛来した飛行物体と思い込んでしまうのか、別のもっと現実的な可能性をいろいろ推測するのかは、論理的な思考に大きな差が出てきます。飛行機、ビニール袋、鳥、低い雲、凧、星、地上の光の反射、等など、可能性はいろいろあります。もちろん、地球外から飛来した飛行物体という推測を否定しきることはできませんが、はるかに合理的な推測がいろいろ考えられることが必要です。
このように、自分の目の前で不思議なことが起こった場合に、その不思議なことは、実際どういったものなのか、それがなぜ起きたのかを論理的で合理的な説明をつける努力は重要なことです。もちろん、この世の中の全てのことが合理的で正確に解明できることばかりではありません。しかし、できる限りの知識を動員して可能なかぎり合理的な説明をつける努力をすることが必要です。場合によっては、その説明が十分に正しいと確信が出来ない場合があります。このような場合は、どうしてこのようなことが起こったかを推論します。推論は一つにこだわらず、いろいろな前提を立てていくつかの仮説を考えてみます。このような考え方が、「科学的なものの考え方」です。科学は、このような科学的なものの考え方によって支えられています。
「科学的なものの考え方」を訓練する機会はいろいろありますが、卒業研究における実験はその最もよい訓練の舞台となります。先人が明らかにした事実と思われることを元に、さらに新しい条件を加えて実験を行い、得られた結果を論理的に思考することにより、その事実をより確実なものに近付けたり、新しい側面を明らかにしていく行為は、「科学的なものの考え方」を実践です。特に、実験結果が、推論と違った場合は、特に科学的に考えることが重要となります。
卒論の学生には、思いがけない結果が出た時にこそ、単純に実験が失敗したと考えずに、実験の仮定条件、実験方法、データの取り扱いなどを十分吟味し、あれこれ合理的な説明を試みる楽しさを味わいなさいと言っています。実験は、自分の予想通りの結果が出た時も楽しいものですが、予想に反した結果が出た時も楽しいものです。是非、大学生になって、「科学的なものの考え方」を行う楽しさを味わってください。
倉沢 新一(健康栄養学科)