栄養学部教員コラム vol.39
2011.07.21 管理栄養学科 佐藤 容子
人間をはじめとする生物は、個体内の内部環境と外界の外部環境との相互作用の中で生命を営んでいます。子宮の中の胎児にとっては、子宮内の環境すなわち胎盤を通じた母体との物質のやりとりが外部環境のすべてです。従って、子宮内環境と胎児との相互作用を理解することが、胎児という「人間」にとっての「環境学」と考えることができます。
子宮内環境の異常は、個体発生の様々な側面に影響を及ぼすことが知られていますが、その中でも最も重篤な障害の一つが神経系における障害です。神経系は、個体発生の非常に早い段階で外部環境の影響を特に強く受ける時期(臨界期:critical periodという)があり、この時期に奇形や機能異常などが生じやすいことが知られています。
しかし、神経系の機能発生過程は今なお不明な点が多く、脳がいつどのようにして機能し始めるのか、脳機能形成を統御する内部因子・外部因子にはどのようなものがあるのかなどについては、多くの謎が残されています。これは、発生初期のニューロンがきわめて小さく脆弱で、従来の電気生理学的測定法を適用することが困難であったことが大きな要因と考えられます。
私たちの研究室では、この限界をうち破る一つの方法として、膜電位感受性色素を用いたニューロン電位活動の光学的多領域測定法を導入し、神経系の機能形成・機能発生・機能構築過程について解析を行っています。
図:膜電位の光学イメージングシステム。 東京医科歯科大学医学部第二生理学教室で作製され、2007年9月から、関東学院大学人間環境学部健康栄養学科にて稼働中。 |
佐藤 容子(健康栄養学科)