栄養学部教員コラム vol.142
2019.07.17 管理栄養学科 中村 優
管理栄養士国家試験の出題形式は、5つの選択肢から1つの正しい記述を選択する形式が大部分を占めます。『じゃがいもの食用部は、塊根である』これは、昨年度の管理栄養士国家試験で出題された記述の1つですが、皆さんはこの記述が「正しい」記述か「誤った」記述か分かりますか?
植物は光合成によって作った糖をデンプンとして貯蔵しますが、デンプンを貯蔵する部位は、種子、茎、根など植物によって異なります。ジャガイモは成長とともに「茎」の部分にデンプンを貯蔵し、肥大化して塊状になったものであるため「塊茎(かいけい)」と呼びます。よって、前述の記述は「誤」となります。
このジャガイモの「茎」に貯蔵されるデンプンですが、同じ品種でもデンプンの蓄積度合によって、加熱後のジャガイモの物性が異なることが明らかになっています。また、ジャガイモは気温が0℃近くになると、ジャガイモに含まれる水分が凍って凍死するのを防ぐために、貯蔵したデンプンを分解してブドウ糖などの低分子の糖に変える仕組みを持っています。砂糖水が水道水に比べて凍りにくいのと同じように、ジャガイモも糖濃度を高めることによって、凍結から身を守るための防御機構を持っているのです。
ジャガイモは人のように言葉を話すことはできませんので、あくまでも人の推論によるものですが、このような現象を科学的な根拠に基づいて論理的に推理し、解明することは研究の醍醐味であると思います。
大学生活での学びを通して、まだ教科書には記載されていない未解明な現象を解明しようとする探求心と論理的思考力を養い、科学的根拠に基づいた望ましい食生活を立案、指導できる管理栄養士を目指してほしいと思います。