栄養学部教員コラム vol.173
2022.05.31 管理栄養学科 田崎 達明
北海道から沖縄まで我が国は地域によって気候風土が異なり、その地で暮らす人々の好みや食品の嗜好も様々です。
日本における各地域の代表的な加工食品として、発酵食品があります。その中でも味噌は原材料として大豆に塩と麹菌を加えたもので、その分類は米味噌、麦味噌、豆味噌などに分かれます。更に地方では塩分濃度が大きく異なっていたり、完成した味噌の色の違いによって白味噌や赤味噌などに分けられています。醤油は味噌と原料(大豆)は同じですが、その製法や使われる微生物が異なっています。また、原料は葡萄で利用する微生物が酵母の「ワイン」、原料はお米で利用する微生物が麹菌と酵母の「日本酒」などがあり、身近にある多くの加工食品に微生物が使われていることに驚かされます。
ちょっと変わった発酵食品として、北海道から北陸にかけて(西日本にも点在する)多くある「いずし」(飯寿司)があります。「なれずし」と言われる発酵食品ですが、主に魚を塩と米飯で乳酸発酵させたものです。現在のお寿司は酢飯を使いますが、なれずしは乳酸発酵により酸味を生じさせ保存性を高めたもので、これが古来から伝わる鮨の由来とされています。これらが比較的寒冷な地域で作られることが多いのは、発酵する際に1か月以上の長期間氷点下にならないと、腐敗してしまう可能性があるからです。
これら以外にも、伊豆七島の「くさや」など、地方独特の加工食品もあり、日本の食文化における豊かな発酵食品の奥深さを感じてもらえると思います。
ところで、みなさんは発酵食品である漬物のうち「ぬか漬け」を作ったことはありますか?
「ぬか漬け」だけでなく漬物と聞くと、「匂いが嫌い」などとされ好き嫌いがあるようですが、栄養学的にみればビタミン群の摂取に役立ち、野菜の繊維質を含むなど素晴らしい機能性食品です。また、家庭で作るぬか漬けは千差万別でご家庭での特徴がそのまま反映される唯一無二、オンリーワンの加工食品だと思います。
最近では、ご家庭で「ぬか漬け」を作られることは少なくなりましたが、いまも昔も日本人の食生活には欠かせない一品だと思います。
最後に、私の研究室では、今年から乳酸菌を多用した漬物を作っています。乳酸菌は乳酸発酵させる細菌の総称ですが、様々な種類の細菌を使った漬物づくりは楽しいものです。併せて衛生管理もとても重要となりますが、味見を希望される方は予約が必要(笑)ですので、声をお掛けください。