教員紹介

栄養学部教員コラム vol.197

2024.06.18 管理栄養学科 田中 弥生

健康食品「紅麹」が事件へと進展したことを私たちはどう受け止めるか

以前、(公社)日本栄養士会の依頼で、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会委員を拝命されたことがあります。特に「特定保健用食品」について分科会では開発された商品についてかなり厳しい意見が出されていたことを思い出されます。

しかし、皆様ご存じのように、小林製薬 の「紅麹」を含む サプリ を摂取した人から 健康被害を訴えている問題で、2024年3月、小林製薬株式会社「紅麹」成分を含有する機能性表示食品の自主回収が発表され、5月1日時点での入院患者数が延270人を越えたと厚生労働省で発表されてしまいました。当然のことながら今回のことにより、機能性食品を一斉に調査・点検する方針が打ち出されました。

さて紅麹とは何でしょう。蒸した米や大豆に紅麹菌を混ぜて発酵させたものです。この菌は,チーズのアオカビや味噌・醤油・酒などをつくるときに使われる麹菌類と同じカビの一種です。紅麹は、脂質異常症で問題となるLDLコレステロールを低下させる成分を含んでいると報告され、このサプリメントは販売されました。 今回の紅麹菌の有害物質である「シトリニン」がありますが、今回の製品では見つかっていないそうです。さて、今回の問題はなぜそのような有害物質を含む可能性がある「紅麹」がサプリメントとして出回ってしまったかです。実は、前述したような厳しい委員会を経てできた「特定保健用食品」とは異なり、機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。簡単に言えば、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要がなく届け出制であるということです。要するに消費者の判断能力に委ねることになるのです。

今回のようなことが二度と起こらないように消費者に利用の仕方や表示の見方、安全性などの栄養素の中身を教育する役割の専門職として、管理栄養士・栄養士も正しい食品等の選択方法を伝えていく必要があります。今一度、機能性表示食品を確認してみましょう。

 

引用文献: 消費者庁ホームページ https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/#info240531

問題があった小林製薬株式会社 紅麹コレステヘルプ

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